ギニー金貨とは|由来と価値の変遷
| 英語名 | Guinea (British gold coin) |
|---|---|
| 発行地域 | イギリス |
| 時代 | 1663年(発行開始)〜1813年(最終発行) |
| 素材 | 金 |
ギニー金貨は、1663年から1813年までイギリスで鋳造された金貨です。150年におよぶ発行期間の中で額面の価値が変動し、後に21シリングという端数の多い価格に固定された珍しい経歴を持ちます。この記事では、名称の由来から額面変遷の経緯、代表的な通称、そして後継となったソブリン金貨への移行までを解説します。イギリス近代コイン全体の背景はイギリス近代コイン入門もあわせてご覧ください。
この記事で分かること
- ギニー金貨の名称がどこから来たのか、そこに刻まれた「象と城」の刻印が意味するもの
- 当初20シリング相当だった価値が、なぜ21シリングに固定されたのか
- スペード・ギニー、ミリタリー・ギニーなど、通称で呼ばれる各時代の姿
- 5ギニーからサード・ギニーまで存在した派生額面
- ギニー金貨がソブリン金貨に交代した経緯と、市場での評価・注意点
発行の始まりと名称の由来
ギニー金貨は1663年2月6日、チャールズ2世治世下で最初に鋳造されました。同年3月27日の布告により法定通貨として位置づけられています。
名称は、鋳造用の金の多くを供給した西アフリカの「ギニア海岸」に由来します。当初はアフリカ会社が、1672年の設立後はロイヤル・アフリカン・カンパニーがこの金の供給を担いました。地名がそのままコインの名前になった、イギリス貨幣史ではやや珍しい例です。
ロイヤル・アフリカン・カンパニーが供給した金で鋳造されたことを示す「象と城」の刻印は、1664年から1726年にかけて一部の年号のコインに見られます。この会社は金や象牙の取引に加えて奴隷貿易にも関与しており、「象と城」の刻印付きギニー金貨は、そうした歴史が日常の貨幣に組み込まれた痕跡として、博物館の教育資料でも紹介されています。刻印そのものはあくまで金の供給元を示す記号ですが、その背景にある歴史は無視できないものとして押さえておく必要があります。
21シリングへの固定 ― ニュートンが関わった価値の安定化
ギニーの実質価値は当初20シリング相当とされていましたが、金価格の高騰により変動が続きました。1680年代には22シリングまで上がり、ウィリアム&メアリー治世には一時30シリング近くまで達したこともあります。金と銀の相対価値が動くたびに、ギニーの実質的な購買力が揺れ動いたわけです。
この状況を落ち着かせたのが、1717年の出来事です。当時、造幣局長を務めていたアイザック・ニュートンが金銀比価に関する報告書を財務省に提出しました。これを受けて同年12月20日の布告により、ギニーの公定価値が21シリングに固定されました。以降、ギニーは「21シリング」を表す言葉として定着していきます。物理学者として知られるニュートンですが、造幣局長としての実務がイギリス貨幣史に残した影響も大きいといえます。
規格 ― 22カラットの金貨
ギニー金貨は22カラット(理論値916.7/1000)の金合金で鋳造されました。この22カラットの合金規格はイギリスで「クラウン・ゴールド」と呼ばれる規格です。詳しくは品位の解説もご参照ください。
標準的な直径は25.00mmとされています。1717年以降の理論上の規定重量は129.438グレイン、グラムに換算するとおよそ8.38gです。これは1トロイポンドの22カラット金から44.5枚のギニーを鋳造するという計算に基づいた数値で、あくまで理論値である点に留意してください。実際の個体では、鋳造時期や摩耗の度合いによって多少の幅が生じます。
ジョージ3世のギニー金貨(1775年銘)。左が表面(右向きの国王の肖像)、右が裏面(王冠を戴いた紋章の盾)。標準的な直径は25.00mm前後です。
歴代君主のもとで鋳造されたギニー
ギニー金貨は1663年から1813年までの150年間、チャールズ2世、ジェームズ2世、ウィリアム&メアリー、ウィリアム3世単独、アン女王、ジョージ1世、ジョージ2世、ジョージ3世と、歴代7〜8人の君主のもとで鋳造されました。同じ「ギニー」という名前でありながら、時代ごとに肖像や意匠が異なる点も、このコインの見どころのひとつです。
通称で呼ばれる代表的なギニー
長い発行期間の中で、いくつかのギニーには通称が付けられています。
スペード・ギニーは、1787年から1799年頃にかけて発行されたジョージ3世期のギニーです。盾の下部が園芸用のスペード(シャベル)のような平底の形状をしていることから、この通称が付きました。肖像と盾のデザインは彫刻家ルイス・ピンゴによるものです。
ヴィーゴ・ギニーは、アン女王治世の1703年銘の5ギニー金貨に付けられた通称です。現存が確認されている枚数がごく少ないとされる、際立って希少な一枚として知られています。詳しくは後述の市場評価の項で触れます。
ミリタリー・ギニーは、ギニー金貨として最後に発行された1813年銘のコインです。半島戦争でイベリア半島に展開していたウェリントン軍への支払いのために、現地住民が金貨しか受け取らなかったことから緊急に鋳造されました。地金にはインドから輸入した金モハール・金パゴダ貨が使われています。なお、この年の鋳造枚数については資料によって数字に大きな幅があり、正確な数値は確認できていません。おおよその規模感として捉えるにとどめるのが適切です。
派生額面 ― 5ギニーからサード・ギニーまで
ギニー金貨には、額面の異なる派生貨も存在しました。ファイブ・ギニー(5ギニー)、トゥー・ギニー(2ギニー)、ハーフ・ギニー、クォーター・ギニー(1/4ギニー)、サード・ギニー(1/3ギニー)です。
クォーター・ギニーは1718年(ジョージ1世)と1762年(ジョージ3世)の2回のみ発行されました。コインが小さすぎて不人気だったため、いずれも発行の翌年には製造が打ち切られています。
サード・ギニー(価値7シリング)は1797年から1813年にかけて発行されました。フランス革命戦争下で銀貨や地金が不足したことを補うために導入されたものです。派生額面の存在は、その時々の経済情勢に合わせてイギリス貨幣制度が調整されてきたことを物語っています。
ソブリン金貨への後継
ギニー金貨は1816年の大改鋳を経て廃止されました。翌1817年からは、額面20シリング(1ポンド)のソブリン金貨が新たに発行されるようになります。彫刻家ベネデット・ピストルッチによる聖ジョージの竜退治のデザインで知られるこのソブリン金貨は、以後イギリスを代表する金貨として長く続いていきます。詳しくはソブリン金貨の記事をご覧ください。
興味深いのは、ギニー金貨の実物が姿を消した後も「ギニー」という単位そのものは生き続けたことです。21シリング(1.05ポンド)換算の会計単位として、専門職の報酬、美術品オークション、競走馬のセリなどで慣習的に使われ続けています。コインとしては消えても、価値の単位としては現在まで名残をとどめているわけです。
市場での評価と注意点
ギニー金貨の中でも、希少な個体は非常に高額で取引されることがあります。代表例が、2019年1月13日にニューヨークで開催されたオークションで落札されたアン女王1703年銘のヴィーゴ5ギニー金貨です。手数料込みで108万米ドルという価格が付き、英国コインのオークション最高記録を樹立しました。この個体は、現存が確認されている枚数が20枚に満たないとされる希少な一枚です。
ただし、こうした記録的な高額例はあくまで特定の個体・特定の時点の落札結果であり、ギニー金貨全般の相場を示すものではありません。通常の流通品の現在の相場については、複数の独立した情報源で裏付けが取れていないため、ここでは具体的な金額を挙げません。
アンティークコインへの投資には価格変動のリスクが伴います。過去に高値で取引された実績があっても、将来の値上がりを保証するものではありません。購入を検討する際は、状態や来歴を確認し、信頼できる鑑定機関や取扱店を通じて入手することをおすすめします。とくに300年前後前の古い金貨は、発行枚数の記録そのものが曖昧な場合も多いため、ミンテージ(発行枚数)の考え方も参考にしながら、希少性を過信しすぎないことが大切です。
まとめ
- ギニー金貨は1663年、西アフリカの「ギニア海岸」に由来する名で発行が始まりました
- 当初20シリング相当だった価値は変動を経て、1717年にニュートンの提言で21シリングに固定されました
- スペード・ギニー、ヴィーゴ・ギニー、ミリタリー・ギニーなど、時代ごとの通称を持つコインが存在します
- 5ギニーからサード・ギニーまで、複数の派生額面が発行されました
- 1816年の大改鋳を経て、1817年からソブリン金貨に後継されました
- 希少な個体は高額落札の実績がありますが、投資には価格変動のリスクが伴う点に注意が必要です
イギリス近代コイン全体の流れはイギリス近代コイン入門、専門用語は用語集、ほかのコインはコイン図鑑からご覧ください。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。アンティークコインの価格は市場動向・状態・希少性などにより変動し、将来の価値を保証するものではありません。記載の価格は執筆時点のものです。購入の判断はご自身の責任でお願いします。
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