ソブリン金貨とは

英語名Sovereign
発行地域イギリスと支所造幣局
時代1817年〜(流通用は1932年まで)
素材

ソブリン金貨は、世界で最も広く流通した金貨です。

経済史家サー・ジョン・クラファムは、その正確さと信頼性から**「世界の主要な硬貨」**と評しました。19世紀の国際商取引を実際に支えた通貨です。

そして日本でも、複数の古銭商が継続的に扱っている入手しやすい金貨でもあります。

ソブリン金貨の表面。ヴェールをまとったヴィクトリア女王の肖像
American Numismatic Society (1902.59.1) / パブリックドメイン
ソブリン金貨の裏面。馬上の聖ジョージが剣を振り上げ竜を討つ図像
American Numismatic Society (1902.59.1) / パブリックドメイン

ヴィクトリア女王のソブリン(1899年、メルボルン鋳造)。左が表面のオールドヘッド、右が裏面の聖ジョージと竜。

純金ではありません

日本の読者が最も誤解しやすい点です。

ソブリンは24金ではなく、**22金(91.67%)**です。残りは主に銅で、「クラウンゴールド」と呼ばれる規格です。

項目数値
額面20シリング(1ポンド)
総重量7.98805g
純金量7.32238g
品位22カラット(.9167)
直径約22mm

**これは品質を落とすためではありません。**流通による摩耗に耐える硬度を得るための設計です。実際に手から手へ渡る通貨として作られました。

メイプルリーフ金貨(24金)などと比べる際は、純金量で比較する必要があります。

なお直径は、資料によって22.0mmとするものと22.05mmとするものがあります。実際の個体にもばらつきがあるため、「約22mm」と理解するのが実務的です。

詳しくは品位をご覧ください。

1817年の復活

ソブリンという名称自体は1489年、ヘンリー7世の時代に遡ります。**しかし現在流通しているのは、まったく別の規格として1817年に作られた「近代ソブリン」**です。

背景にはナポレオン戦争後の通貨改革(1816年鋳貨法)があります。それまでのギニー金貨は額面21シリングという半端な単位でしたが、20シリング=1ポンドという切りの良い額面に切り替えられました。

2つの意匠

**購入時に必ず確認すべき点です。**ソブリンには裏面の意匠が2種類あります。

ソブリン金貨の表面。ヤングヘッドのヴィクトリア女王の肖像
American Numismatic Society (1935.55.7) / パブリックドメイン
ソブリン金貨の裏面。花輪に囲まれた王冠つきの紋章の盾
American Numismatic Society (1935.55.7) / パブリックドメイン

盾(シールドバック)タイプのソブリン(1872年、ロンドン鋳造)。聖ジョージではなく、王冠を戴いた紋章の盾が描かれています。

聖ジョージと竜

イタリア出身の彫刻家ベネデット・ピストルッチが1817年に制作しました。

意匠は一度改訂されています。1821年に、ガーター勲章の輪飾りが除かれ、聖ジョージの武器が折れた槍から剣に変更されました。

消えて、戻ってきた意匠

この経緯が独特です。

時期裏面
1817年〜聖ジョージと竜
1825年〜盾(シールドバック)に変更
1871年〜聖ジョージが復活。1874年頃まで盾と並行
1887年〜全て聖ジョージに統一

つまり約46年間、聖ジョージは姿を消していました。

さらに複雑なのが支所造幣局です。シドニーとメルボルンは1871年以降どちらの意匠を採用するか選べたため、盾デザインを1887年まで独自に作り続けました。

同じ年号でも、造幣所によって意匠が違うことがあるわけです。

支所造幣局

イギリスは金の採掘地に近い植民地に造幣所を設けました。現地で採れた金を、その場でソブリンにするためです。

造幣所記号開設閉鎖
シドニーS1855年1926年
メルボルンM1872年1931年
パースP1899年1931年
オタワ(カナダ)C1908年1919年
ボンベイ(インド)I1917年12月1919年
プレトリア(南アフリカ)SA1923年1932年

ボンベイは実質的に1918年のみの稼働でした。それだけ現存数が限られます。

記号の位置

シドニー鋳造のソブリン裏面。日付の上、地面の部分に小さく S の記号が見える
1889年シドニー鋳造の裏面。日付の上、聖ジョージの立つ地面の部分に、小さく「S」が打たれています。 American Numismatic Society (2008.63.109) / パブリックドメイン

意匠によって位置が違います。

**この1文字が価格を大きく変えることがあります。**詳しくは造幣所記号をご覧ください。

なお1900年時点で、イギリス国内に流通していたソブリンの約40%はオーストラリア製だったとされます。支所造幣局は補助的な存在ではありませんでした。

市場での位置づけ

一般的な年号は地金価値に連動します

ソブリンは**現在も地金型コインとして流通しています。**流通用の発行は1932年に終わりましたが、1957年に地金型として再開されました。

そのため一般的な年号は、金価格に小幅な上乗せを加えた水準で取引されます。純金量7.32238gが価格の基準になります。

この性質は地金型コインに近く、ウナとライオン金貨のような収集型とは値動きが異なります。

希少年号は別世界です

1819年銘のジョージ3世ソブリンは現存10枚未満とされます。2013年のオークションで最高グレード品が18万6000ポンド(手数料込み)で落札されました。

2019年には、王立造幣局が別の個体を10万ポンドの価格で抽選頒布しています。

同じ「ソブリン」でも、年号と造幣所の組み合わせで価格は桁違いに変わります。

贋作について

ソブリンは贋作の多い金貨です。

NGCの警告を正しく読む

NGC の「世界で最も偽造される硬貨トップ25」には、イギリスのコインとして次が含まれています。

**重要な注意点があります。警告されている「1887年」は通常の1ソブリンではなく、5ソブリン(5ポンド金貨)**です。混同しないでください。

通常の1ソブリンで偽造が多いとされるのは、1822年、1827年、1832年、1887年、1916年(オタワ・Cマーク)、1917年などの年号です。1970年代に作られたとされる高品質な偽造品も確認されています。

判別の手がかり

CoinsWeekly が報告している事例が参考になります。

1922年銘とされる偽物は、直径22.25mm・重量7.95gでした。同誌が比較に用いた正規品の値(22.05mm・7.98g)とわずかに違います。

**ただし前述のとおり、直径の公称値は資料によって割れます。**寸法だけを頼りに判定できるものではありません。

**しかも決定打は別にありました。1922年、ロンドン造幣局はソブリンを鋳造していません。**存在しないはずの年号だったのです。

NGC は、縁のツールマーク(表面6時方向、裏面12時方向)や、日付の数字周辺の不自然な盛り上がりも手がかりとして挙げています。

年号と造幣所の組み合わせが実在するかを確認することは、有効な第一歩です。

日本で買う場合

ソブリンは日本国内でも、複数の古銭商・地金商が継続的に扱っています。入手性という点では恵まれた金貨です。

購入時には、他の金地金商品と同様に消費税が課されます。

なお、イギリスでは1837年以降のソブリンにキャピタルゲイン税の免除がありますが、**これは英国居住者向けの制度であり、日本の税制には適用されません。**税務の扱いについては税理士にご確認ください。

まとめ

アンティークコインの価格は市場動向・状態・希少性により変動します。金相場の影響も直接受けますし、売却したいときにすぐ買い手がつくとは限りません。購入にあたっては、こうした点も踏まえてご判断ください。

ヴィクトリア朝の貨幣全体はヴィクトリア朝コイン入門、ほかのコインはコイン図鑑からご覧ください。

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