新20円金貨とは 幻の昭和7年銘の謎
| 英語名 | New 20 Yen Gold Coin |
|---|---|
| 発行地域 | 日本 |
| 時代 | 明治30年〜昭和7年(1897年〜1932年) |
| 素材 | 金 |
新20円金貨は、貨幣法(1897年)によって生まれた、旧20円金貨の後継にあたるコインです。同じ「20円」でありながら、重さは旧金貨のちょうど半分になりました。
この記事では、その量目(りょうめ。コイン全体の重さのことです)の変化と図柄の意味に加え、新20円金貨のなかでも別格の存在とされる昭和7年銘が、なぜ「幻の金貨」と呼ばれるのかを、財務省の公式刊行物が記す一次情報から解説します。
新20円金貨(大正2年銘、大阪造幣局)。左が旭日と年銘のある面、右が菊花紋・桐・菊の枝のある面。
基本データ — 重さは旧金貨のちょうど半分
規定の量目は16.6667g、直径は28.78mmです。品位は金900/銅100で、旧20円金貨と変わりません。
純金量は15gで、これは旧20円金貨の純金量30gのちょうど半分にあたります。1897年の貨幣法によって、金の裏付けとなる価値基準(金平価)が半分に切り下げられたためです。日清戦争の賠償金で十分な金準備を確保できたことが背景にあるとされます。
米国貨幣学会(ANS)が所蔵する明治30年銘の個体を実測すると、直径28.5mm・重量16.67gでした。規定値とほぼ一致しています。
図柄 — 龍が消え、旭日に変わる
新20円金貨では龍が廃止され、一方の面に旭日と八稜鏡が組み合わされ、もう一方の面に菊花紋・桐紋・菊桐の枝・額面が配されています。
年号と額面が刻まれる面という点では、旧金貨と新金貨で構造は変わっていません。旧20円金貨では龍のある面に、新20円金貨では旭日のある面に、それぞれ年銘が入ります。変わったのは、そこに置かれた図柄が龍から旭日になったことです。
**ただし、どちらの面を「表」と呼ぶかは資料によって食い違います。**国内では龍のある面を表とする慣行がありますが、海外の博物館では逆に記載されていることがあります。実物の写真を見比べる際に混乱のもとになるため、本記事では旧20円金貨の記事と同様、「表」「裏」ではなく図柄名で呼び分けます。詳しい背景は表面と裏面をご覧ください。
龍が新金貨で採用されなかった理由については、龍が中国(清)の思想に基づき元首を象徴する意匠とみなされ、貨幣図柄から排除すべきという意見があったため、とされています。
発行枚数 — 年号ごとの規模
新20円金貨の年号別発行枚数は、次のように伝えられています。
| 年号 | 発行枚数 |
|---|---|
| 明治30年銘 | 1,861,000枚 |
| 明治37年銘 | 2,759,470枚 |
| 明治43年銘 | 2,163,644枚 |
| 明治44年銘 | 1,470,057枚 |
| 大正期(1912〜1920年)合計 | 約18,605,548枚 |
| 昭和5年銘 | 11,055,500枚 |
| 昭和6年銘 | 7,526,476枚 |
| 昭和7年銘 | 不明 |
明治期・大正期・昭和5〜6年銘は、いずれも発行枚数が100万枚を超える規模で発行されており、旧20円金貨に比べて現存数・流通量は多いとされています。一方で、昭和7年銘だけは発行枚数そのものが分かっていません。これは俗説ではなく、財務省の公式刊行物が明記している事実です。
昭和7年銘 — なぜ「幻の金貨」なのか
この記事の核心です。
昭和7年(1932年)1月、日本国内での金貨製造そのものが停止されました。新20円金貨における昭和7年銘は、この停止までのごく短期間にしか製造されなかったことになります。
財務省が近代金貨の放出を行う以前、昭和7年銘は造幣博物館に2枚が確認されているのみで、他に発見例がありませんでした。ところが放出にあたって財務省の保有品を調べたところ、新たに68枚が発見され、そのほとんどが未使用クラスだったとされています。
さらに、標準的な価格目録である『日本貨幣カタログ』は、2005年版に至るまで昭和7年銘について「昭和7年銘がある」という記載にとどまり、**標準店頭小売価格そのものが記載されていませんでした。**民間での取引事例がほとんどなかったためです。
この状況を象徴する逸話として、他の全年号をすでに収集していたある著名な収集家が、昭和7年銘だけ入手できず、「見つけて持ってきた貨幣商に3,000万円払う」という懸賞をかけていたと伝えられています。
「発行枚数が分からないほど記録が乏しく、価格目録にすら載らず、見つけた者に3,000万円を払うという逸話まで生まれた」――これが昭和7年銘を「幻の金貨」たらしめている、具体的な根拠です。
昭和5年銘の「35枚」に関する重要な注意
ここは誤解が広がりやすい点なので、明確に区別します。
2002年、国内の民間オークションで昭和5年銘(未使用クラス)が920万円で落札された記録があります。同年銘は海外流出や鋳潰しにより現存数が少ないとされ、2005年から2007年にかけての財務省放出品のなかには35枚が含まれていました。
**この35枚は、財務省が保有していたロットに含まれていた枚数であり、昭和5年銘の発行枚数ではありません。**昭和5年銘の発行枚数は約1,105万枚です。一部のウェブ情報では、この「財務省放出ロット中の35枚」と「総発行枚数」を混同し、「昭和5年銘は35枚しかない」と紹介している例が見られますが、桁が3桁以上違う誤りです。
昭和5年・6年・7年銘は、まとめて「特年」と呼ばれ、通常の年号より高い評価を受けるとされています。ただし、その中でも昭和7年銘だけは、上で見た記録の乏しさという点で他の特年とも一線を画します。
鑑定 — 財務省ホルダーとNGC・PCGS
財務省保有品として売却された近代金貨は、透明なポリカーボネート製のホルダー(固有のシリアル番号入り)に封入されて放出されました。
NGC・PCGSはいずれも、この財務省ホルダーに入ったまま鑑定するサービスを提供しています。ただし、NGCは自社のスラブに封入されていない場合、グレードを保証しないと明記しています。
つまり「鑑定済み」という表示だけを見ても、それが自社ホルダーによる保証を伴うものかどうかで意味が変わってくることになります。購入時には、どちらの状態で鑑定されているかを確認することをおすすめします。
市場での位置づけとリスク
ここからは価格・相場に触れますが、いずれも執筆時点の情報であり、相場は変動します。
新20円金貨は、旧20円金貨に比べて現存数・流通量が多く、希少性は相対的に低いとされています。純金量15gが目安となる下限価格を形成する点は、日本の近代金貨入門で解説したとおりです。
昭和5・6・7年銘の「特年」は例外的に高い評価を受けるとされますが、こうした評価は日本語の買取業者による情報に依拠する部分が大きく、独立した一次資料での裏付けは限定的です。具体的な相場観を調べる際は、複数の情報源を確認し、掲載時点を必ず確認してください。
金貨は地金としての価値を持つため金相場の影響を直接受けますし、希少年号については鑑定や真贋確認の負担も伴います。売却したいときにすぐ買い手がつくとは限らない点も踏まえて、ご判断ください。
まとめ
- 新20円金貨の純金量は15gで、旧20円金貨(純金30g)のちょうど半分です
- 図柄は龍が廃止され旭日に変わり、年銘の面と紋章の面の組み合わせも旧金貨と逆になっています
- 昭和7年銘は発行枚数不明・博物館に2枚のみ・放出時に68枚発見・価格目録に記載なしという事実が重なり、「幻の金貨」と呼ばれています
- 昭和5年銘の「35枚」は財務省放出ロットの枚数で、総発行枚数(約1,105万枚)とは別物です
- NGCは財務省ホルダーのまま鑑定した場合、グレードを保証しないケースがあります
新20円金貨と、その2倍の重さを持つ旧20円金貨を見比べると、貨幣法による量目半減という制度転換を実感できます。日本の近代金貨全体の流れは日本の近代金貨入門でも解説していますので、あわせてご覧ください。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。アンティークコインの価格は市場動向・状態・希少性などにより変動し、将来の価値を保証するものではありません。記載の価格は執筆時点のものです。購入の判断はご自身の責任でお願いします。
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