フォリス銅貨とは何か|ディオクレティアヌス改革を解説

英語名Follis
発行地域ローマ帝国
時代3世紀末〜4世紀(ディオクレティアヌス改革294年以降)
素材

この記事で分かること

月桂冠を戴いた皇帝マクシミアヌスの右向き肖像を刻んだ表面
表面(オブバース) American Numismatic Society (1973.56.80) / パブリックドメイン
守護神ゲニウスの立像を刻んだ裏面
裏面(リバース) American Numismatic Society (1973.56.80) / パブリックドメイン

テトラルキア期のフォリス(ヌンムス)。ディオクレティアヌスと共同統治したマクシミアヌスの発行分(American Numismatic Society 所蔵、300〜301年、ローマ造幣)。

フォリスとは何か──名称の由来

フォリスは、ローマ帝国後期に登場した銅を主体とする大型貨幣です。表面にはごく薄い銀メッキが施されていました。

「フォリス」という呼び方は、ラテン語で「革袋」を意味する言葉に由来するとされています。当時の貨幣が革袋に詰められて配布されていたことが名称の由来という説があります。ただし、これは現代の研究者が便宜的に用いている呼称であり、古代においてこの貨幣が実際に何と呼ばれていたかは分かっていません。研究者によっては「ヌンムス」や「ケンテニオナリス」という呼び方をする場合もあります。

ディオクレティアヌスの貨幣改革とフォリスの誕生

フォリスは294年頃、皇帝ディオクレティアヌスが行った貨幣改革の中で導入されました。ローマ帝国の貨幣史全体については古代ローマコイン入門ガイドでも解説していますので、あわせてご覧ください。

フォリスは、それまで流通していたアントニニアヌス貨に代わる大型貨幣として登場しました。改革では金・銀・銅の三本立て通貨体系が採用され、フォリスはその中で銅貨の中心的な存在として位置づけられました。

金貨のアウレウスは、1ローマポンドから60枚を鋳造する比率が維持されました。銀貨のアルゲンテウスは1ローマポンドから96枚が鋳造され、理論上の重量は約3.4グラムとされています。そして1アルゲンテウスはフォリス8枚に相当する価値が設定されていました。

なお、改革によって定められた貨幣の中では、最小額面にあたるポスト・リフォーム・ロレアートという貨幣もあり、重量は1グラムをわずかに超える程度でした。また、ディオクレティアヌスが発行した最後のデナリウス貨は、重量約2.8グラム以下にまで縮小していたことも分かっています。

規格と銀含有率

初期のフォリスは、重量約10〜10.5グラム、直径はおよそ28〜32ミリメートルという大型の貨幣でした。銀含有率は約4〜5パーセントとされ、品位としては決して高くありませんが、当時としては十分な存在感を持つ貨幣だったと考えられます。

具体的な出土例としては、カルタゴ造の一例で重量6.53グラム、直径29ミリメートルという個体が確認されています。また、アクイレイア造の一例では重量10.3グラム前後と報告されており、初期の規格に近い重量を保っていたことがうかがえます。

図柄と銘文

フォリスの表面に代表的な図柄として用いられたのが、「ゲニオ・ポプリ・ロマーニ」、すなわち「ローマ民衆の守護霊」を表す銘文です。表と裏の図柄の組み合わせは、当時の貨幣が担っていた政治的・宗教的なメッセージを読み解く手がかりにもなります。

このほか、銘文に「サクラ・モネタ」、すなわち「聖なる造幣所」という表記が見られる例も存在します。

額面価値の変遷

フォリスの額面価値は、導入当初は5デナリウス・コムーネスとして評価されていました。その後、この評価額は12.5デナリウスへ、さらに25デナリウスへと段階的に切り上げられていきました。これは貨幣そのものの重量や銀含有率が変化したというよりも、名目上の評価額が引き上げられていったことを示しています。

重量減少の歴史

フォリスは帝国全土で大量に鋳造された貨幣でしたが、その規格は時代とともに大きく変化していきました。

306年頃から重量の低下が始まり、335年までには重量3グラム未満にまで減少したとされています。さらに313年頃、マクシミヌス2世が敗北した後には、直径も18〜19ミリメートルほどまで縮小しました。こうした変化を経て、318年頃をもって本来の額面としてのフォリスは終了したと考えられています。

その後、コンスタンティヌス期に入ると、重量は5〜7グラム程度で比較的安定するようになりました。ただし、310年代には銀含有率が1.4パーセント以下にまで低下したとされ、鉛を含む青銅合金が使用されることで実質的な価値がさらに低下していたとする見方もあります。

造幣所と刻印

フォリスは帝国各地、約12の造幣所で鋳造され、それぞれの造幣所は独自の略号を貨幣に刻印していました。この造幣所刻印は、現代の収集家がフォリスの鋳造地や年代を特定する際の重要な手がかりとなっています。

東ローマへの影響

フォリスという貨幣の系譜は、西ローマ帝国の枠を超えて後世にも影響を残しました。東ローマ帝国では498年、皇帝アナスタシウスによる貨幣改革の中で、40ヌンミ相当の貨幣として復活したことが知られています。

収集における魅力

フォリスは、古代ローマコインの中でも比較的入手しやすく、種類も豊富なことから、収集家の間では入門的な古代コインの一つとして位置づけられています。造幣所ごとの刻印の違いや、時代による重量・図柄の変化を追いかけることは、コレクションの奥深さにつながります。

個体の状態を評価する際には、表面のパティナの状態や保存状態を示すグレーディング、鑑定機関であるエヌジーシーピーシージーエスによる評価も参考にされます。フォリスを含む古代コインの購入を検討する際は、あくまで執筆時点の情報として、価格変動や真贋のリスクがあることを踏まえたうえで判断することが大切です。

まとめ

フォリスは、ディオクレティアヌスの貨幣改革によって生まれた、ローマ帝国後期を代表する大型銅貨です。名称の由来には諸説あり、古代における正式名称も不明なままですが、その規格や図柄、造幣所ごとの刻印は、当時の貨幣制度や政治情勢を映し出す貴重な資料となっています。重量や銀含有率が時代とともに変化していった過程を追うことで、ローマ帝国後期の経済状況の一端にも触れることができます。

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