3ドル金貨の歴史と希少性を徹底解説
| 英語名 | Indian Princess Head Three Dollar Gold Piece (Three-Dollar Gold, $3) |
|---|---|
| 発行地域 | アメリカ合衆国 |
| 時代 | 1854年〜1889年 |
| 素材 | 金 |
この記事で分かること
- 3ドル金貨がなぜ発行されたのか、その誕生の背景
- 表面・裏面のデザインと素材の特徴
- 発行造幣局ごとのミントマークと希少性の違い
- 現存が極めて少ないとされる1870-Sの詳細
- シリーズが1889年に終了した経緯
Indian Princess Head Three Dollar Gold Piece (Three-Dollar Gold, $3)(American Numismatic Society (1969.172.1))
米国唯一の3ドル貨、その誕生
3ドル金貨は1854年から1889年にかけて、米国造幣局が製造した金貨です。額面3ドルという単位は、米国の金貨史上このシリーズのみに採用されました。
導入のきっかけは1853年の造幣法にあるとされます。当時流通していた3セント切手を1シート(100枚)まとめて購入する際、ちょうど3ドルになる便宜が動機のひとつだったと伝わっています。実際には東海岸ではあまり流通せず、金銀貨を中心に経済が回っていた西海岸で一部使われたとされます。
デザインを手がけたのは、造幣局のチーフ彫刻師ジェームズ・B・ロングエイカーです。彼は金1ドル貨や二重イーグル金貨のデザインも担当した人物で、3ドル金貨にもその作風が色濃く表れています。表面には、ネイティブアメリカン風の羽根飾りを頭に着けた「インディアン・プリンセス」像が描かれ、これが「インディアンヘッド」と呼ばれる由来になっています。裏面はタバコ・小麦・トウモロコシ・綿を組み合わせた花輪と額面表示という構成です。細部にも変化があり、1855年からは裏面の「DOLLARS」の文字が大きく変更されています。
素材は金90パーセント・銅10パーセントの合金で、直径20.5ミリ、重量5.015グラム(77.39グレイン)、金の含有量は0.1451トロイオンスです。縁には溝状の刻み加工が施されています。金貨の品位や重量は発行年を通じてほぼ一貫しており、この規格の安定性もシリーズの特徴のひとつといえます。
発行造幣局とミントマークの見方
3ドル金貨を製造したのは、フィラデルフィア・ダーロネガ・ニューオーリンズ・サンフランシスコの4造幣局です。ミントマーク(造幣局を示す刻印)は裏面の花輪の下に刻まれており、フィラデルフィア製造のものだけは無刻印となっています。
初年となる1854年は、フィラデルフィアで138,618枚が鋳造されました。同じ1854年でも、ダーロネガ(Dマーク)での鋳造はわずか1,120枚にとどまり、同造幣局における唯一の3ドル金貨発行例とされています。ニューオーリンズ(Oマーク)も1854年に24,000枚を鋳造しました。
サンフランシスコでの鋳造は1855年・1856年・1857年・1860年に行われたとされ、1870年にはごく少数のみ製造されたと伝わります。この1870年サンフランシスコ製の1枚が、後述する伝説的存在とされる個体です。
シリーズ全体を通じたビジネスストライク(一般流通用に製造された貨幣)の累計ミンテージ(鋳造枚数)は約538,074枚と推定されています。これに対し、プルーフ(鏡面仕上げの記念的な貨幣)の累計は約2,060枚と、桁違いに少ない数字です。
南北戦争後の低迷と希少年代
南北戦争が終わった後、3ドル金貨の年間ミンテージはしばしば5,000枚未満にまで落ち込みました。金貨自体の需要低下や、額面としての使い勝手の悪さが背景にあるとみられます。ただし例外もあり、1874年と1878年は政府による正貨流通再開策と関連して鋳造量が一時的に増加し、比較的入手しやすい年とされています。
希少性の観点で特に注目されるのが1875年です。この年はプルーフのみが発行され、公式記録上は20枚とされていますが、実際には約30枚から60枚が現存すると推定されています。1875年銘は、過去に米国コインとして高額で取引された事例があるという逸話も伝わっていますが、詳細な裏付けは確認できていません。
二番目に希少とされるのが1876年で、こちらもプルーフのみの発行です。三番目に希少とされるのは1873年の「クローズド3」と呼ばれる変種で、業務用ストライクも存在し、現存数は数百枚規模と推定されているものの、正確な枚数は定かではありません。このうちミントステート(未使用品質)の状態で確認されている個体は、ごくわずかとされています。
伝説とされる1870-S、エリアスバーグ=バス標本
3ドル金貨シリーズの中でも別格の存在とされるのが、1870年サンフランシスコ製の1枚です。この年のサンフランシスコ鋳造はごく少数にとどまり、現存が確認されているのもこの1枚のみとされています。
この個体は通称「エリアスバーグ=バス標本」と呼ばれ、グレーディング(貨幣の状態評価)ではスペシメン50(SP50)と評価されています。裏面には「893」という刻印が確認されており、この個体特有の識別点となっています。
プロベナンス(来歴)をたどると、1982年にイーライアズバーグ・コレクションが売却された際、68万7500ドルで落札され、当時の米国コインとしての最高記録となりました。そして2023年1月には、ヘリテージ・オークションにて552万ドルで落札され、米国3ドル金貨史上最高額を記録しています。
なお、旧サンフランシスコ造幣局の礎石にもう1枚が封入されているという噂も伝わっていますが、これはあくまで伝承の域を出ないものとされています。
シリーズの終焉とコレクションの視点
3ドル金貨は、1889年の造幣委員会がこの額面の廃止を議会に提言したことで、その歴史に幕を下ろしました。額面としての使い勝手の悪さや流通の限定性が、最終的な廃止の背景にあったと考えられます。
このシリーズは、フィラデルフィア以外の造幣局製が総じて少なく、特にダーロネガ製や1870-Sのような極端に希少な個体は、NGCやPCGSといった第三者鑑定機関の評価を伴って市場に流通することが一般的です。年代やミントマークによって希少性が大きく異なるため、購入や収集を検討する際は、発行年・造幣局・状態を丁寧に見極める姿勢が欠かせません。
3ドル金貨をはじめとする米国金貨全般の基礎知識については、米国金貨ガイドでも整理していますので、あわせて参考にしてください。なお、アンティークコインは希少性や状態によって評価額が大きく変動する資産であり、将来の価格を保証するものではありません。執筆時点の情報をもとに、あくまで歴史的・文化的な観点からの理解を深める一助としてお読みいただければ幸いです。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。アンティークコインの価格は市場動向・状態・希少性などにより変動し、将来の価値を保証するものではありません。記載の価格は執筆時点のものです。購入の判断はご自身の責任でお願いします。
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