ヴィクトリア朝シリング銀貨の基礎知識と魅力
| 英語名 | Victoria Shilling (British Silver Coin, 19th Century) |
|---|---|
| 発行地域 | イギリス |
| 時代 | 1838年〜1901年(ヴィクトリア女王治世) |
| 素材 | 銀 |
この記事で分かること
- ヴィクトリア朝シリング銀貨の重量・直径・素材などの規格
- ヤングヘッド、ジュビリーヘッド、オールドヘッドという3種類の肖像の違い
- 裏面デザインやダイナンバーの見分け方
- 発行枚数や希少とされる年号の情報
- シリングという通貨単位がたどった歴史
Victoria Shilling (British Silver Coin, 19th Century)(American Numismatic Society (1992.57.115))
ヴィクトリア朝シリング銀貨とは
ヴィクトリア女王(在位1837〜1901年)の治世に鋳造されたシリング銀貨は、19世紀イギリスを代表する少額銀貨のひとつです。長い治世の中でデザインが3回変更されており、肖像の違いによって発行時期をおおまかに判別できます。イギリス硬貨全般の基礎知識については、ヴィクトリア朝コインの総合ガイドもあわせてご覧ください。
規格と素材
ヴィクトリア朝シリングは重量5.66グラム、直径23.5〜23.6ミリメートルで、素材は925/1000の純度(フィネス)を持つ銀、いわゆるスターリングシルバーが使われていました。エッジ(側面)はミルド加工によるリード(溝)仕上げとなっています。
1816年の大改鋳では規格が統一され、重量5.7グラム・直径24ミリメートルという標準に整えられました。この標準重量はトロイオンス(貴金属の重さを量る単位)換算で2/11オンス、グレイン表記では87.3グレインに相当します。ヴィクトリア朝のシリングも、基本的にこの体系を踏襲したものといえます。
3種類の肖像
ヴィクトリア朝シリングの表面と裏面デザインは、治世を通じて大きく3回変更されました。
最初の肖像は「ヤングヘッド」と呼ばれ、1838年から1887年まで使われました。彫刻家ウィリアム・ワイオンが手がけたもので、ヴィクトリア女王は即位からわずか2ヶ月後の1837年8月25日から、ワイオンのモデルを務めたとされています。デザインは1838年2月に承認され、同年から鋳造が始まりました。初年である1838年の発行枚数は1,956,240枚です。
次に登場したのが「ジュビリーヘッド」で、1887年から1893年まで用いられました。彫刻家ジョセフ・エドガー・ベームによる設計で、金貨・銀貨双方に導入されましたが、小さな王冠のデザインが評判を呼ばず、「マンネリ」と揶揄されたと伝えられています。特に同時期のジュビリーヘッド6ペンス硬貨は半ソブリン金貨に酷似していたため、金メッキを施した詐欺に悪用され、市場から回収される事態にまで発展しました。ベームは1890年に死去しており、これが新しいデザイン検討の後押しになったとされています。
最後の肖像は「オールドヘッド」、別名「ヴェールドヘッド」です。彫刻家トーマス・ブロックが手がけ、1893年から1901年のヴィクトリア女王死去まで使われました。夫アルバート公の死から30年以上が経過してもなお喪服姿で描かれていることから、「未亡人像」とも呼ばれています。女王の死後は、次代のエドワード7世の肖像に引き継がれました。
裏面デザインとダイナンバー
ヤングヘッド期の裏面は、彫刻家ジャン・バティスト・メルレンによるデザインです。月桂樹とオーク葉のリースの中央に「ONE SHILLING」の文字が配されています。
一部の年号では、裏面上部に「ダイナンバー」と呼ばれる型番が刻まれているのが特徴です。カタログ番号で言うと、ダイナンバーのない高浮き彫りタイプはKM#734.1(1838〜1863年)、ダイナンバー入りの低浮き彫りタイプはKM#734.2(1867〜1879年)に分類されます。こうした細かな型式の違いは、コインの鋳造年や刻印を読み解くうえで重要な手がかりになります。
発行枚数と希少とされる年号
ヴィクトリア朝シリングは、1847年を除き治世中ほぼ毎年鋳造されたとされています(要確認)。発行枚数は年によって差があり、例えば1883年は7,281,000枚と比較的多く発行されました。
一方で、1854年のヤングヘッドシリングは現存数が極めて少なく、キーデート(コレクター間で特に希少とされる年号)とされています(要確認)。また、1850年のオーバーデート(数字が重ね打ちされた希少なエラー的個体)は、オークションで2,750ポンドで落札された例があるとされ、来歴(プロヴェナンス)がはっきりした個体は評価が高まる傾向にあります。初期のヤングヘッド型式はスピンク分類でSp#3902とされ、こちらも稀少との見方があります(要確認)。
古い年号のシリングをコレクションする際は、状態の良い未使用に近い状態(ミントステート)の個体ほど市場での注目度が高い傾向にあります。ただし、アンティークコインの価値は年号や状態、需要によって変動するものであり、執筆時点の情報が将来にわたって当てはまるとは限りません。投資目的で購入を検討される場合は、価格が下落するリスクもあることを念頭に置く必要があります。
ジュビリーヘッド期の珍しい額面
ジュビリーヘッド期には、シリングとは別に「ダブルフローリン」と呼ばれる4シリング硬貨も発行されました。これは1887年から1890年までのわずか4年間のみ製造された、イギリス史上最も短命だった額面のひとつとされています。重量22.6グラム、直径36ミリメートルで、銀の含有量は0.6727トロイオンスでした。
シリングの語源とその後
シリングという名称は、古英語の「schilling」に由来するとされています。地域によって価値の基準が異なり、ケント地方では牛1頭分、他の地域では羊1頭分の価値に相当したと伝えられています。
素材面では、1920年に銀の含有率が92.5%から50%へと引き下げられました。さらに1947年には銀を一切使わない純銅ニッケル合金へと切り替わっています。そして1971年、イギリスが通貨の10進法化を実施したことで、シリングという単位そのものが廃止され、実質的に5ペンス硬貨へと引き継がれました。なお、20世紀のシリングは、当時のドイツの1マルク硬貨とサイズ・重量がほぼ同一だったとも言われています。
まとめ
ヴィクトリア朝シリング銀貨は、ヤングヘッド、ジュビリーヘッド、オールドヘッドという3種類の肖像を通じて、女王の治世64年間の移り変わりを映し出しています。発行枚数や裏面のダイナンバーといった細部を見比べることで、コインの背景をより深く知ることができます。イギリス硬貨全体の流れを押さえたい方は、あわせてヴィクトリア朝コインの総合ガイドもご参照ください。
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