予算100万円で選ぶコイン

予算100万円は、アンティークコインにおいて選択肢が一気に広がる水準です。

古代の金貨に手が届き、状態を選ばなければ複数枚を揃えることもできます。一方で、名前の知られた最高峰にはまだ届きません。

この記事では、この予算で何が狙えるのかを、当サイトで扱った実際の落札実績から整理します。

この予算帯の全体像

まず、当サイトが記事で扱ったコインの価格帯を並べます。執筆時点で確認できた実績です。

コイン価格帯の目安100万円で
アテナイのフクロウ銀貨250〜1,700米ドル◎ 状態の良い個体も狙える
アレクサンドロスの銀貨200〜535米ドル◎ 複数枚も可能
セステルティウス100ユーロ〜◎ 図像の良いものを選べる
ソリドゥス金貨1,450〜3,250米ドル○ 良質な個体が1枚
ゴシッククラウン銀貨英2,750〜3,250ポンド ※○ 中級品が1枚
アウレウス金貨個体差が大きい△ 状態を選べば
シュラクサイのデカドラクマ数万〜数十万米ドル✕ 届きません
ウナとライオン金貨37万米ドル〜✕ 届きません

**※印はオークションの落札実績ではなく、業者が提示している販売価格です。**性質が異なる数字なので、他と同列に扱わないでください。ゴシッククラウンの落札実績としては、1847年銘の NGC PR65 が7万5000米ドルという例があります。

**為替の影響を受けます。**上記は米ドル・ユーロ・ポンド建ての実績なので、円換算額は変動します。

なおアテナイのフクロウ銀貨は、上位グレードでは4,935米ドル(NGC Mint State)という実例もあります。状態によって大きく変わる点にご注意ください。

3つの方針

100万円の使い方は、大きく3通りに分かれます。

① 1枚に集中する

古代の金貨を1枚持つという選択です。

ソリドゥス金貨であれば、良質な個体(4世紀後半〜5世紀)が1,450〜3,250米ドルで取引されています。古代ローマの金貨を、状態の良いもので持てる水準です。

アウレウス金貨も選択肢に入ります。アウグストゥスやネロなど発行量の多い皇帝のものは、短命だった皇帝の金貨に比べれば市場に出る頻度が高い部類です。ただし価格帯には幅があり、この予算に収まるかは個体の状態と希少性によります。

この方針の利点は、後から売却する際に買い手を見つけやすいことです。金貨は流動性が比較的高くなります。

**近代の地金型コインを選ぶなら、100万円が現実的な下限になります。**2026年7月21日時点の金スポット価格(1トロイオンス米ドル4,057.60〜4,098.20、ドル円約163円)を前提に純金量から機械的に試算すると、米国20ドル金貨(ダブルイーグル)の地金価値だけで約64万3,000〜71万7,000円になります。50万円帯ではこれだけで予算を超えますが、100万円あれば地金価値を確保したうえでプレミアムや鑑定費用にも予算を回せます。ただし地金型コインは金相場の変動をそのまま受けるという点で、地金価値にほぼ左右されない古代コインとは性質が異なります。この試算は金相場・為替の前提が変われば変わる、機械的な計算にすぎません。

② 分野を横断して揃える

時代ごとに1枚ずつという集め方です。

**この4枚が100万円の範囲で揃います。**貨幣史の流れを手元で追えるようになり、コインを見る目も養われます。

米国貨幣協会(ANA)は「購入前に3〜6か月の学習期間を置く」ことを勧めています。実物を複数持つことは、その学習そのものになります。

③ 状態を追求する

同じ貨種でも、状態によって価格は数倍変わります。

たとえばアレクサンドロスの銀貨は、同じ Good VF でも200米ドルと500米ドルの実績があります。さらに上のグレードを狙えば、100万円でこの貨種としては最上位クラスに手が届きます。

「安く買って本数を増やす」より「1枚の質を上げる」ほうが、長期的には満足度が高いという意見もあります。

選び方の基準

鑑定済みを選ぶ

この価格帯からは、鑑定済みの個体を強く勧めます。

理由は2つです。

  1. 贋作リスクを大きく下げられる
  2. 売却時に説明が不要になる

無鑑定品は安く見えますが、真贋の判断を自分で背負うことになります。

ここで鑑定機関の使い分けに注意が必要です。近代の金貨(20ドル金貨など)はNGCPCGSのどちらでも鑑定を受けられます。しかしギリシャ・ローマの古代コインを鑑定に出せるのは、実質的にNGC Ancientsだけです。PCGSは執筆時点で古代コインのうち清朝の一部しか扱っておらず、ギリシャ・ローマは対象外です。この記事で挙げたアウレウスやソリドゥスを鑑定に出す場合は、NGC Ancientsが窓口になります。

状態表記を正しく読む

古代コインでは流通グレード(VF、EF など)が使われ、加えて **Strike(打刻)**と **Surface(表面)**が5段階で評価されます。

**「グレードが高い=美しい」とは限りません。**打刻の中心がずれていれば、同じグレードでも印象は大きく変わります。

近代コインの場合はミントステート(MS60〜70)の数値尺度になります。古代と近代で評価軸が違う点にご注意ください。

洗浄品を避ける

これは価格以前の問題です。

銀貨のトーニング、青銅貨のパティナは、いずれも除去すると価値が大きく損なわれます。

「きれいに見える」ことは良品を意味しません。むしろ不自然な明るさはホイジング(人工研磨)を疑うべき兆候です。

注意すべきこと

総額は落札価格ではありません

海外オークションで買う場合、支払額は落札価格の1.25〜1.35倍になることがあります。

落札価格
 + バイヤーズプレミアム(20〜25%程度)
 + 送料・保険料
 + 関税・消費税
 + 決済手数料・為替コスト

予算100万円なら、落札上限は75〜80万円程度と見ておくのが現実的です。詳しくはアンティークコインの始め方をご覧ください。

売りたいときに売れるとは限りません

アンティークコインは流動性の低い資産です。納得できる価格で売却できるまで、数週間から数か月を要することがあるとされます。

また買値と売値の差(スプレッド)は、希少性の高いコインで15〜35%程度とされます。買った瞬間にこの幅の含み損を抱える構造です。

「必ず上がる」という説明を疑う

将来の値上がりを保証する情報は存在しません。

米連邦取引委員会(FTC)は、投資目的とうたって不当な高値でコインを販売した業者を摘発した事例を報告しています。上乗せ幅が市場価格の最大3倍に達したケースもあったとされます。

この価格帯は、そうした販売の主要な標的になりうる水準です。

まとめ

なお、この記事で示した価格はすべて執筆時点で確認できたものです。相場は市場動向・状態・希少性により変動し、金銀相場や為替の影響も受けます。購入にあたっては、こうした点も踏まえてご判断ください。

具体的な商品は、当店の在庫から順次このページでご紹介する予定です。

古代の金貨・銀貨を中心に据えるなら予算50万円で選ぶコイン、鑑定がまだ現実的でない予算帯については予算10万円で選ぶコインもあわせてご覧ください。ほかの予算帯は予算別スターターキットから、個別のコインはコイン図鑑からご覧ください。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。アンティークコインの価格は市場動向・状態・希少性などにより変動し、将来の価値を保証するものではありません。記載の価格は執筆時点のものです。購入の判断はご自身の責任でお願いします。

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